ニューヨークのイタリアンレストラン・バスタパスタで、絵画アーティストの果物や野菜のデッサンを描いている葛西さん展覧会をしました。

バスタパスタはチェルシーにありユニオンスクエアーも近い賑やかなエリアにあります。レストランでありながら常時絵や写真を展示、販売するギャラリーもしています。私の12年のニューヨーク生活で陶芸の制作をしている間、公私ともにお世話になったレストランです。私の定番の作品で好評を頂いているオリーブ入れは、オーナーの鈴木さんに”バーに置く長いオリーブ入れが欲しい”と依頼されて作った作品です。2つ口がある砂糖入れも”2種類の砂糖を入れる1つで2つ口がある容器があったらなあ”という一言で生まれました。 キャンドル入れ、塩入れ、花瓶なども使っていただいています。そのバスタパスタで、ニューヨーク生活の最後に私の作品の展示をさせていただく事になりました。

展示するのは主に壁なのですが、壁に掛けられる陶器の作品が少なく、いろいろと思案していました。そんな折、棚を壁に取り付けイタリアの画家モランディの絵ように作品を並べる、というアイデアを知人にいただきました。モランディはありふれた瓶や水差しなどを並べて描いた静物画で有名な画家です。葛西さんはテレビ局の大道具の仕事も手掛けていて、棚作りは得意という事でした。“彼のデッサンと私の陶器が調和する棚”を二人で考えながら、葛西さんに棚作りの制作をして頂きました。葛西さんは棚を絵のフレームに見立て、大小様々な大きさの棚を制作し、お互いの作品を並べて展示したり、一点のみで展示したり、と趣向を凝らした展開になりました。

展示した陶器のひとつに”秘密の場所”(英語名:Hidden Place)という定番の作品があります。外側がマットな白、内側が金色の、まるで洋なしのような形をしたこの作品はこの展覧会をする事で生まれました。この洋なしの様なオブジェは『これは何?』『もしかしてなにかの巣?』と覗き込みたくなってしまいそうな大きな穴が空いていて、その中は以外にも金色で覆われている不思議な作品になりました。

写真の花瓶は、今まで作った中で一番大きな作品です。縄文時代を意識し、鉄くずのようにかすかな光沢の出る黒い上薬を使っています。この上薬は私のお気に入りのひとつになっています。今後はもっと大きな陶器作りにチャレンジしたいと思っています。

私の思い出深い場所で展示をしようといってくれた鈴木さん、買っていただいたお客様、応援してくれたスタッフ、そしてお世話になった方々に感謝しています。